ライナルト

ライナルト帝国初代皇帝。現皇帝アグネスの祖父。
嫡子で、当時皇太子であったヴェルナー(アグネスの実父)が急死した翌年、
建国四十六年に病死し、彼の直系の孫に当たるアグネスが即位することになった。
生まれ年は不明だが、『姫様(アグネスのこと)が生まれた時、陛下は八十を過ぎていた』というハルトヴィヒの言から、
没年は九十代と推算される。

クリセ州の出身で、元々は同州の騎士団の一つ、フォルスター騎士団を率いる騎士団長であったが、
宗主国の腐敗を憂いてか、反旗を翻すことを決意。同じくクリセの騎士団であった、
宗主国や他の騎士団と戦い、此れ等を打倒した。
群雄割拠の状態にあった中原を二十年足らずで統一するなど、
その勢いたるや日の出のごときものがあり、いずれは世界を手中に収めるだろうとも言われていた。

バルティア州・メソガエア州を平定し、
当時から既に世界最大の都市であった王都オルテュギアを陥落させ、
四州の主となったのを機に、47年前にライナルト帝国を建国。元号を建国とし、この年を元年とした。
その後は天下統一を目指し、帝国の版図拡大に努めていたが、建国七年にアウソニアの森を焼き討ちした結果、
帝国に侵入したリザードマン族によって身内を直系だけ残して皆殺しにされ(皇家虐殺)、野心を失い、
勝利を目前としながらも、アウソニアから全軍を引き上げる。以降は自ら戦を起こすことはなかった。
版図拡大を諦めた折に、城塞を各領地に築き、帝国領の防備を固めた。

過去には、自身の組織した精強な魔導師団を半永久的に持続させることを目的として教育に力を入れており、
帝国魔術大学はその魔導師団を母体としている。

晩年には、帝国の発展のためロストテクノロジーの発掘に勤しみ、中でも娯楽・競技に強い興味を示した。
ゴルフ野球、蹴球など球技のテクノロジーが現在の帝国で広く普及しているのはそのためである。
帝国に先進的な娯楽を齎したライナルトであったが、彼自身は老齢に差し掛かっていたこともあって、スポーツの中ではゴルフを最も好んでおり、権力者たちはライナルトと親睦を深めるためにこぞってゴルフを嗜むようになった。
一方で、大衆に人気を博していた野球には深い興味を示さず、その発展に国の予算を割くこともなかった。
それほどに野球には興味がないが、孫娘が関わるとなると話は別で、
彼女が監督として参加する野球試合に招待されず、観戦できなかった際には、憤りを見せた。

遺言により彼が愛用していた魔法の杖は、現在皇帝の杖として孫娘に受け継がれている。
内孫である彼女からは爺上と呼ばれていた。

人間性に問題はあれど、往時は偉大な皇帝であったが、晩年は耄碌し、精神に変調をきたしており、
アグネスが生まれたことでその乱心ぶりは顕著になった。
次期帝位継承者の彼女が実父である皇太子のような凡庸な人間に育つことを恐れ、
親元から引き離し、手元で囲い込むようにして育て、帝王たるべく教育した。

念願の跡継であるアグネスに対して、過保護なところがあり、
アグネスに乞われて彼女を宮殿の外に連れ出したディートハルトを処刑しようとしたことがある。
とはいえ、世間知らずのまま成長されても困るとも思っており、
彼女の十歳の誕生日にプレゼントとして、自分の意志による城外への外出を解禁した。
その背景には、ディートハルトアグネスを裏切らないという認識と、
直接剣を交えることで知った、彼の武勇に対する信頼があり、
外出には、門限や4人以上の護衛に加え、必ずディートハルトを連れるという制約をつけていた。

非常に壮健な人物で、齢八十を超えてなお、筋骨隆々とした身体を維持していた。
年より若く見える外見をしており、顎髭を蓄えている。

アグネスが生まれてからは彼女の成人まで生きようと、一切の不摂生を止めた。
しかし、その行動はアグネスを少しでも長く見守りたいというような世間一般の祖父らしい気持によるものではない。
帝政を廃止しようと考えている息子ではなく自身の取り替え部品のように育てたアグネスに帝位を譲り、
己の名を偉大な帝国の建国者として後世に語り継がせたいという自己愛によるものである。
一見すると、アグネスを純粋に溺愛しているようにも見え、
事実彼としては惜しみない愛情を注ぎ、執着していたのだが、
実のところその「愛」はどこまでも自分本位な歪なものであった。

絶対君主制を理想の政体としており、皇帝崇拝の国民への浸透と徹底に努めた。
領民を軽んじるきらいがあったが、自伝を演劇化し、それを自ら主演する、
著作「帝国皇帝論」を国家指定の教本にするなど、その教化には余念がなかった。

アグネスの目前では多少歯止めが利くものの、
烈火のような気性の持ち主で、者にも物にも容赦がない。
それを示す行いの一つに、舞台「水戸黄門」アグネスに招かれて鑑賞した際には、
彼女が主演を務める手前、その場では怒りを抑えたが、後日原作小説を有害図書に指定。
国内から残さず没収した上で焼却処分を行ったというものがある。

アグネスの支配者としての才能を確信しており、自身が果たせなかった天下統一の大望を彼女に託そうとしていた。
それゆえ孫娘へかける期待は尋常ならざるものがあり、彼女がごく幼い時分から、
自ら教鞭を取って一日四時間の教育時間を設け、思想から軍略に至るまで、徹底した帝王教育を施していた。
また、常に皇帝らしくあることを要求し、その一環として、お絵かきのような普通の子供らしい遊びに耽ることを禁じていた。

馬術、剣術、魔術のどれをとっても人間離れしており、
全盛期の強さは、帝国最強の騎士と謳われたルードルフを含む帝国騎士団長三人を束にしても、到底及ばない程であった。
また個人の武勇のみならず、政治、謀略、戦略においても類い稀な才能を見せており、
その昔、彼が中原を支配していた宗主国に反旗を翻した際に、
当時彼が率いていたフォルスター騎士団に組し、後には従属することを選んだのも、
彼個人の器によるところが大きいとされている。
成した偉業から、今なお「人類最強」、「稀代の英傑」として語り継がれており、憧れる者も数多い。
凄惨な行いを辞さない一面から多くの民に恐れられ、晩年は狂乱していたとされるものの、
彼が絶対的なカリスマ性を以て中原に君臨した英雄であることは論を待たないだろう。

往年は精神面においても、およそ隙というものがなかった。
誰からの支えも必要とせず、他人を愛さず。
血族に一応の情はあれど、それに無闇に絆されるといったこともなく、5人いた息子たちの処遇については、
望みがないと判断した四男と五男を早々に政略に用い、厄介払いする。
息子たちの中では最優だった次男に目をかけ、凡才の長男を冷遇する。
それなりに優秀な三男はそれなりに遇するなど、能力主義を徹底していた。

好色漢で、正妃の他に四人の側室を持ち、非公式の愛人も多数もっていた。
女性への労りの気持ちなどはかけらもなく、女性関係における非道な振る舞いは枚挙に暇がない。

19の年に、宗主国に頭のあがらぬ不甲斐ない父を隠居に追い込み、
そこから泥水をすするような苦労の果て、15年かけてクリセ州を平定した過去を持つ。
それだけに、凡庸で理想論を唱える甘ちゃんのヴェルナーには苛立ちを感じていたものの、
嫡子である彼に帝位を譲りたいという気持ちと期待も捨てきれず、冷遇するに留めていた。

Sランクの火術を行使する魔術師としての顔を持ち、
アグネスにとっては、政治・軍事だけでなく、魔術の師でもある。
魔術の中でも戦において重宝する火術を特に好んでおり、アグネスにも火術を教えていた。
なお、今日の帝国で最も研究が進んでいる魔術も、火術である。

いつ謀反を起こすかもしれない野心旺盛な者たちを、
いかにカリスマで抑えておけるかどうかが主君としての器、というのが持論で、
優秀でさえあれば、邪心を持っている者でも構わずに重用していた。

人材の配置においては、適材適所を心掛けている。
そのため、同じ帝国騎士団長であっても、ルードルフのような武勇に優れた騎士には戦いを、
ハルトヴィヒのような政に長けた騎士には内治を、それぞれ任せようとしていた。

猜疑心が強く、場合によっては我が子すら疑う。
ヴェルナーから紫芋を使った料理を振舞われた時には、
その食物には珍しい色を見て毒を入れたと勘違いしたと言われている。
ちなみに、荒れた土地でもよく育つ作物であるこの紫芋が発祥の地オルテュギアでは流行らなかったのは、
ひとえに彼が紫芋を厭ったために大々的な栽培が叶わなかったから、という説もある。

恐怖政治を志向しているため、アグネスが勧善懲悪作品に傾倒することをよく思っておらず、
水戸黄門を有害図書に指定したのちも、ディートハルトがアグネスにロステク小説を読み聞かせ、
アグネスがそれを好むようになる度、焚書を行っていた。
そうしながらも、楽しみを奪ったのが自分であるということを、アグネスには絶対に知られたくなかったらしく、
緘口令を敷き、アグネスに事実を伝えた者は、例外なく死を賜るとした。
このことを受けて、プリンセスガードたちは、
『正体不明の放火魔「ヤス」が書庫に火を放っている』という話を、
アグネスに真実を隠すために作り上げ、彼はプリンセスガードの間では「ヤス」という渾名でも呼ばれるようになった。

彼の目から見て、日に日に帝王らしく生い育っていくアグネスに、
己を越える器を感じ、果てには一種の崇拝めいた念さえ持つようになっていた。
寿命が残りわずかと悟ってからは、アグネスが長じて覇王として世界に君臨する事だけを、
心の支えとして生きるようになっており、アグネスに帝位と国を恙無く継がせるために、
帝国を自分の代で終わらせようとしていたヴェルナーの殺害を決意するに至った。

アグネスをこよなく可愛がっているようで、思いやりには欠けるところがある。
自分の勇姿見せたさに、幼い彼女を炎天下のゴルフ大会に連れ出し、あげく忘れて競技に夢中になる。
子供には退屈きわまりない難解な国劇を数時間に渡って、観劇させる。
自身の保身の為、アグネスをリザードマンが出没する城下に送り出す。
アグネスが格別の慕情を寄せているディートハルトの命を、逆恨みから狙い、
それが失敗すると卑劣な離間工作により二人を引き裂こうとするなど、大変に自分本位。
また悪行の一切を、嫌われるのを恐れアグネスには隠し通そうとしているが
だからといって悪逆を控えようとすることも、改悛の念を見せることもない。

ディートハルトは彼を世界一と言い切るほど嫌っているが、
それでもアグネスの慕う祖父であるとして、アグネスの前では悪しざまに言うことはなく、
ライナルトの本性についても伏せている。

異種族に対する差別意識が強く、ドワーフ族カエル族については、彼ら発祥の魔術は利用するものの、
醜い種族として嫌っており、血族を虐殺したリザードマン族のことは根絶やしにするべき怨敵として憎んでいた。

佩剣はオリハルコンで創られた業物。
老いさらばえてなお、抜剣した折には、ディートハルトを圧倒する程の膂力と技倆を見せつけ彼の剣を両断した。

  • 最終更新:2017-06-08 07:52:56

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