ヴェルナー

ライナルト帝国初代皇帝ライナルトの実子。
帝国の第一皇子にして皇太子であり、アグネスの実父。
努力家だが才能に恵まれず、父からは弟たちと比較され、幼い頃から心無い扱いを受けていた。
ライナルトの長男で、正室との間に産まれた嫡子だが、跡継ぎと認められ、皇太子として皇室に迎えられたのは皇家虐殺が起き、彼以外の目ぼしい候補者がいなくなってからのことである。

皇家虐殺が起こる以前から、エンケルス騎士団の団長、ハルトヴィヒの補佐を受けて政を行っていた。
皇家虐殺によって、政を取り仕切っていた皇族が尽く失われ、政体の大幅な改革が行われた折に、
ハルトヴィヒが年若くして文官の最上位である宰相に任ぜられたのは、その能力と功績もさることながら
彼がヴェルナーが最も信頼を寄せる人物であることも要因であった模様。
ハルトヴィヒとの友情は生涯続き、皇太子になってからは彼の協力のもと、
皇室に所属する文官から広く支持を集め、政において多大な功績を残した。

実弟である第二皇子ヘルフリートとその腹心ホラーツからは、
人が良いだけの凡愚と目され、快く思われていなかった。

建国四十五年、序幕開始の二年前に、ゲレオンの命令を受けたスティーグによって、
食事に毒を盛られ、暗殺された。

ヴィクトリアとは、貴人には珍しい恋愛結婚。
彼女を誰より愛しており、その生家のアーネット家が改易された後も
皇帝をはじめとする周囲の圧力にも屈さず離縁を断固として拒み、
長く子に恵まれなかったが側室を持つこともなく、先立たれた後も、新しい妃を娶ることはなかった。
彼の凡庸さがアグネスに影響することを懸念した父帝ライナルトによって、
妻の忘れ形見で、遅くに出来た一人娘のアグネスとは引き離された。
ヴェルナー自身も亡きヴィクトリアに瓜二つのアグネスを見るのが辛く、
接し方が分からずに距離を置いていたため、父子水入らずで過ごす時間は殆どなかったようだが、
娘への愛は深く、その幸せを願っていた。
それゆえに、娘を皇帝にする気はなく、父が築き上げた帝国を、
彼女に継がせることなく、終わらせようとしていた。
一方のアグネスからは父親として慕われ愛されている。
ライナルトにさえ基本的には強気で、叱責することさえあるアグネスだが、
我儘を発揮するとしっかり叱られるためか、彼にはやや弱い。

彼自身は父帝の娘への教育方針を、「冷酷な独裁者を育てるだけのもの」と見なしており、
当時プリンセスガードのリーダーであったディートハルトに、
アグネスに対等な立場で接することの出来る唯一の存在として目をかけ、
処刑される寸前だった彼を機転により救った。
娘にとってかけがえのない存在であり、己の親友の息子であるディートハルトに期待するところは大きく、
その後も折にふれて手助けをしていた。
実は、不良騎士として悪名高かったディートハルトプリンセスガードに選任したのは他ならぬ彼であり、
父と親友の猛反対をおしての人選であった。
生前、アグネスの十歳の誕生日に、ディートハルトに対し、
何があってもアグネスの味方でいて欲しいという胸の内を明かしていた。
この頃には、ことアグネスに関するディートハルトへの信頼は全幅のものとなっており、
アグネスの味方であればどんな立場でもいいと伝える中で、恋人も例に挙げている。

厳しい英才教育を受けさせられるも努力の甲斐なく結果を出せず、そのことでやさぐれ、
喧嘩に明け暮れていた幼少期のディートハルトを叱り、諭したことがあり、
その時からディートハルトは彼に恩義を感じていたようだ。

父から悪知恵だけは働くと言われるように、どこか食えないところもあったようだが、
苛烈な父とは正反対に、性格はお人よしとの評そのままに、気さくで穏やか。
凡才なのは本人が認めるところであるが、徳に恵まれている。

親友であるハルトヴィヒとともに、
晩年の乱心したライナルトと、反目しあっていた。

皇帝独裁を志すライナルトとは政治方針を異にし、
自らが教育行政に大きく携わるようになってからは、「帝国皇帝論」を教科用図書から外すなど、
皇帝たる父に逆らうような行動もとっていた。

四十七年前、ライナルトの即位に際して、それまで彼が率いていたフォルスター騎士団を受け継ぐ。
この頃には、全能の父とは似ても似つかぬ凡才として周知されており、
家臣たちからも凡愚として陰口を叩かれる有様で、長子でありながらライナルトからも冷遇されていた。

身分を問わず誰に対しても気さくに接し力になろうとするような仁愛の持ち主で、
その掛け値ない優しさから下の者たちに大いに慕われており、
身内どころか家臣からも馬鹿にされ冷遇される日々の中、その一点が彼を保っていた。
苛烈なライナルトにとっては、彼のそういった優しさに由来する甘さ、
損得よりも善悪や情に基づく行動規範が、凡庸な能力にも増して気に食わないところであり、
後には、アグネスを後継者として育てる上での反面教師にされた。

元々芳しくなかったライナルトとの親子仲は、
彼がライナルトへの反感を露にするようになったのを機に悪化の一途を辿った。
様々な出来事を経て、アグネスが十歳になる頃には、最早取り返しがつかないほど冷え切っていた。

  • 最終更新:2017-06-11 16:28:42

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